2016.7.31 「高額納税者公示制度」は何故廃止された??

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毎年、フォーブス誌が発表している「世界長者番付」
今年も1位はビル・ゲイツで750億ドル(約8.5兆円)。
2位のファッションブランドZARA創業者、アマンシオ・オルテガ(79)に
80億ドルの大差をつけ、ぶっちぎりの1位でした。

日本勢は57位にファーストリテイリングの柳井 正さん(146億ドル)、
82位にソフトバングの孫正義さん(117億ドル)で、
両者とも昨年よりも順位を下げました。
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日本人のみの長者番付はこちらから見ることができます。

この「世界長者番付」はフォーブス誌が独自に調査、分析に基づく推定で発表されており、
所有株式の時価総額などがかなり影響しているものと見られています。
なので、単年度に発生した所得を対象としているわけではありません。

しかし、かつて日本には政府自らが高額納税者の納税額を発表する”長者番付”
「高額納税者公示制度」という制度があったのを覚えていらっしゃるでしょうか?
もしかしたら若い方はご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんね。

毎年発表の時期になると、週刊誌には芸能人やスポーツ選手などの有名人だけを
ピックアップし、納税額から年収を予想したランキングが掲載されおり、
テレビのワイドショーなどでも必ず話題にされていました。
上位にはSMAPなどのメンバーが常連だった覚えがあります。
なかなか安定の難しい芸能やスポーツの世界ですから、
昨年上位に居た方が翌年には綺麗に居なくなっていることなどが度々あり、
その様子などをおもしろおかしく伝えていた印象があります。

1947年から2005年まで導入されていたこの制度、
当初は「高額所得者の所得金額を公示することにより、
第三者のチェックによる脱税牽制効果を狙う」ことという狙いがあったようです。
しかし、その高額納税者の名簿はエリアごとに分けられ、
住所・氏名まで掲載する形で市販(!)されていました。
今となっては考えられない制度です…。
(ちなみに、現在でも当時の冊子はオークションなどで高値で取引されているようです。)
もちろん、そこに掲載されているということはそれだけお金を持っているという証拠ですから、
窃盗や誘拐などの危険にさらされたり、実際に資産家が殺害されるなどの事件も起きました。
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このような事態を避ける為、公示逃れをする人が出てきました。
高額納税者の公示対象が「3月31日までに提出された申告書」に限る、
とされていたことから、3月31日までは所得税額が1,000万円を超えない所得で申告し、
4月1日以降に本来の税額で修正申告することで公示を逃れようとしたのです。
もちろん過少申告加算税や延滞税など余分な税金が追徴課税されるのですが、
そのお金や手間をかけてでもプライバシーを守ろうとした人が沢山いたのです。

そのような事態を受け、2006年「高額納税者公示制度」は廃止されました。
当時、ネットは普及していましたがSNSはまだそこまで普及していなかったはずです。
SNSが普及した現在、この制度がまだあったら…と想像すると…
…あまり良い事態になっていたとは思えませんね。

*2010年から「年俸1億円以上を支給している企業役員」の個人名と報酬額の開示が義務づけられており、
企業の役員報酬に限り、情報が開示されています。

(via フォーブスジャパン)

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